キラが死んだ


そう聞かされたとき何も言葉がでなかった。










<from now on 〜 A ver 〜>

















風がざわめく。

戦争が終わった。

コーディネーターの勝利という形で。

地球軍の軍に入っていたものは殺された。アスラン等が追っていた足つき

に乗っていたものも全て。

学生の彼らも

キラも.....











『裏切り者のコーディネーター』と言われたキラ。





コーディネーター、ナチュラル共に罵倒を浴びせられたキラ。





だけど、キラはその言葉に何も反論せず

ただただ、静かに耳を傾けていた。

死ぬ直前まで何も言葉を発さずだけど、全てを諦めたような表情なんかしてなくて







『アスラン』







キラは最期にただ一言、









彼の名を呟いた。



















「風邪をひくぞ」

後ろから同僚の声が聞こえアスランは振り向いた。

「イザーク.....」

覇気のない声音にイザークはため息を一つついた。



「式まで一ヶ月もないと言うのに.....」





『この、腰抜けが!』





そういってやりたかったが、その言葉をのみこんだ。

言ったとしても今のアスランは何も反論しないと確信がもてたから。











アスラン・ザラ。

ラクス・クライン。

『希望』と称されていた二人の結婚。

式の用意はちゃくちゃくと進んでいる。





『婚約』が正式な『結婚』へとプラント中に広まったのは戦争が終わってから

幾日もしない間。

そしてそのことをアスランが知ったのはそれから二週間後。

正式に発表された後に批判の言葉を父に申し出ようとしたが、それも

無理だった。









「イザーク」

「何だ!?」

冷たい風にブツブツと文句を呟いていたイザークはアスランのほうへと視線を

向ける。





「オレはラクスを幸せにできるのかな?」

自嘲気味に苦笑の言葉が漏れた。











「式をあげるというのに何を!」

イザークの言葉はもっともな意見だ。

むしろ、こんなことをいう自分のほうがおかしい。

でも、



「ラクスを幸せにできるという自信がないんだ。

オレはキラが好きだし愛している。

それは、キラにしかむけられない感情だ。

ラクスには失礼かもしれないが愛しているとはいえない。」

あるとすれば、肉親に向ける『好き』だろう。

「お前がクライン嬢を幸せにしなくてどうする。お前にしかできないことなんだぞ」





「それでも、やっぱりオレはラクスを愛せない」

「.....そうか。」

イザークはそれ以上何も言わなかった。

アスランの瞳が全てを語っていたから。

「好きにしろ」

バサリとコートを翻してイザークはさっていった。

「キラ...」

自分よりも大きな大きな木を見上げた

満開の桜が時折花びらを落としてくる。

「好きだよ。お前を愛している、ずっと。」

その言葉はキラに届いたのか分からないけれどアスランは満面の笑みを

浮かべて桜を見ていた。















気持ちは変わることなく


ずっとずっと


愛しているから















from no won:これからもずっと



+あとがき+

死にネタが多くてすみません。
そして、テーマは『世界の中心で愛をさけぶ』。
もし、ザフト勝利の場合だったら、キラもオーブの姫様も関係なく結果的に
アスランとくっつくのは、クライン嬢だと思います。
でも、それは強制的で二人の間に『愛』なんてものは存在しないでしょうし、
アスランは、キラのことを忘れないと思います。死んだ人ほど忘れない存在
はありませんしね。
クライン嬢は、クライン嬢でアスランのそんな気持ち(アスランがキラのこと
を好きなこと)を知っているからこそ、アスランの側にいようと思うのではな
いでしょうか。
二人で慰めあうのではなく、キラがここ(生きていた)にいた
と、他の誰が忘れても自分達だけは覚えていようと。
ある種、クライン嬢は、アスキラの共犯者という形で。
あっ、言わなくても分かると思いますが、クライン嬢もアスランに対しての感情
は肉親に向ける好きに変わりはありませんから。




20041123