No Title










戦場をかけぬけていた白い機体は今はもう見るも無惨な状況で

それに乗っていたパイロットが生きているなんてありえなかった。





<No Title>





『投降してください』







静かに告げたのは赤い機体に乗った彼。



AAは、白い機体   ストライクがいたからこそ互角とはいえないが、

それでもその場を持ちこたえていられた。

ストライクがいない今むやみに攻撃なんてすればどうなるか想像しなくても結果が

目に見えている。



「信号弾を出して....」

これで終わりなんだと誰もが思った。











※ ※ ※



アスランは、愛機から降り立った。

格納庫全体が騒がしい。

当たり前だ。

今まで手こずっていた足つきを捕らえたのだ。





ゾロゾロと足付きから出てくるクルーをみながらアスランは一つため息をついた。

今、足つきのことを任せられているのはアスランなのだ。

これからのことを考えるとため息が出てもおかしくはなかった。

(───アスランっ)

彼の声が頭をよぎった。



自嘲気味な笑みを口元に浮かべる。

全てにおいて、

既にどうでもよかったのだ。







「アスランっ」

地面に降りたったと同時くらいにニコルがアスランの側にやってきた。

「イザークとディアッカは先に行きましたよ。僕たちも早く行きましょう。」

「あぁ。」

「もぅ、しっかりしてくださいよ。ザラ隊長!」

いつものアスランのような気がしなかったが、足つきを捕らえられたことによる

彼なりの嬉しさなのじゃないかな?

と一人納得し、背中を軽く叩いた。

アスランは、そんなニコルの仕草に苦笑した。







「初めまして。貴方方の担当をさせていただくザフト軍のアスラン・ザラです。」

ビシッと敬礼をして目の前にいる数十人の敵を見回した。




(これが、キラが守りたかった奴ら)




不安な目で自分を見ている者、嫌悪を隠さないで睨みつける者とさまざまだった。

一番前に立ち、覇気のない声音で彼女は地球軍の形式な敬礼をする。

「....艦長のマリュー・ラミアスです。」

覇気のない声音に本当にこれが艦長なのかとアスランは思った。

沈んだ顔をしている彼女はどこか軍人にふさわしくないと。

彼女の隣にいる黒い短めな髪をしている女性のほうがソレらしく感じた。







「ねぇ、ちょっと」

「?」

ひょっこりと顔を出し、アスランの目の前に来て普通に尋ねてくる紅い髪を

した女の子。

普通に話しかけられたことに瞬時に反応が鈍った。

「ちょっと、聞いてる?」

「きさま、何をそんな風な態度を!」

アスランの後ろから顔を出し、赤い髪をした少女に今にも飛びかかろうとしている

イザークを後から慌ててディアッカは止めに入る。

「で、何かな?赤い髪のお嬢さん?」

イザークを後ろから抱き抱えながらディアッカは赤い髪の少女に問いかけた。

「あぁ、貴方でもいいわ。ねぇ、ここに『アスラン・ザラ』っていない?」

「はっ?」

突然の思わぬ質問に首を傾げた。

「何、貴方達。私たちよりも優れているのにもう一度聞かなければ

いけないわけ?」

だから『アスラン・ザラ』だっていってるでしょ!」

どこか身近にいる存在の言い方に似ていてディアッカは、アスランのほうをみた。



「アンタが『アスラン・ザラ』?」

「あっ、あぁ。」

いかぶしげな顔をしながら疑いの目とともに見てくる彼女に肯定した。

「・・・・ストライクって機体に乗ってたパイロットのこと知ってる?」

投げかけられた問いにアスランは肩を一つゆらした。

周りの空気がざわめいた。

そんなアスランを本物だと信じたのか両手に大事そうに持っていた白い布で

隠していたモノをアスランへと差し出す。

「コレ、アンタが作ったんでしょ。返すわ。」

今は電源の入っていない緑色の鳥型ロボットは紛れもなくアスランがキラに

渡したもの。

大事に使われていたのだろう。

ところどころにかすり傷程度のものはあったが大きな傷なんて一つもなかった。





   アスラン。)





「キラ」

アスランはソレを慈しむように受け取った。