彼が好き

そう気づいたときに フッと 思ったのは

僕の双子の姉のこと。











Cry for the moon

















「アスハ」

「イザーク?」

いかぶしげに彼女は珍しくも声をかけてきた彼の名を呼んだ。

















いつも会議などが終わるとアスランとカガリは会っていた。

それは、なかなか二人で会えないからで、そしてせめてものの時間だった。

それを提案してのはカガリ。

アスランはその提案を聞き、一瞬驚いたあとに苦笑して二言返事でOKしてくれた。







(やっぱり、君らは双子だよ)






そういいながらの苦笑。

正直複雑だった。

なぜ、そこでキラが出てくるのか?

訊ねたかったが聞けない。


この関係を壊したくないから.....。







「アスランなら来ないぞ。どうやらキラが倒れたらしい。」

「そうか。」

倒れたのは、自分が帰ってからだと知ってしまった。

自分があんなことを言ったばかりに....。

あんな彼を彼女はみたことがない。

戦中、フレイのことでもあんな表情をしていなかった。




恐ろしかったと同時に罪悪感がスッととおった。






「悪かったな。ここまで足をはこばせて。」

「別に、こちらに用事があったから気にするな。」

イザークはどこか頬をそめる。

あまり、人に礼を言われることがないからか内心は喜んでいたりする。

カガリは、そんなイザークの内心を知ることはなく去って行く。

どこか、足取りが重いような気がするのは、きっと気のせいではないはず。

イザークは、そんな彼女を引き止めることはせず、ただここから見える外の景色を見ながら呟いた。



「キラは、アスランが好きだぞ。」

ビクッと身体をこわばらせるカガリを気にもしていない。

カガリは扉の前で立ち止まりイザークのほうへ顔を向ける。

「・・・・知っているさ。それくらい。」

そして、もしかしたらアスランもまた.....。

その考えを振り切るようにカガリはそれだけを言うと歩き出した。



















イザークは、そんな彼女の去っていく様子を見て、姿が消えたあとため息をつく。



「人を好きになると皆変わってしまいますわね。」

りんとした、けれど透きとおった声音で発した。

「クライン嬢」

ラクスが近くに立っていたことに動じもせず彼女のほうを振り返る。

振り返ったイザークにラクスはニコリと微笑んだ。

何もかもこの状況を知っている表情で。





20040816