僕が君を好きなように

君にも好きな人がいる

たとえ、それが通じ合っていなくても

いつかは.....と信じていたい











Cry for the moon

















『私、キラが好きですわ。』







以前に言われた言葉。

真剣な表情をして。

冗談で言っているのではない。

恋愛感情として。







部屋にいるのはキラとラクスの2人だけ。

アスランとカガリには先に行ってもらった。

先に、キラに大切な用事があるからと、ラクスがアスランに頼んでいたのだ。

カガリをつれて、先に向かったアスランをキラがどこか悲しそうにみているのを知りながら、

先に彼らを行かせたのだ。













彼女にその言葉を言われると思わなかった。

ラクスは、アスランの婚約者だったのだから。

戸惑った。

けれど、

「...ごめん、ラクス。」

自分は、彼女に答えてやることは出来ない。

「ラクスのことは好きだよ。でも、僕が一番好きなのは.......」

「アスランですか?」

「っ!?」

驚いた。

何でラクスが知っているのか?

サイ達にも双子の姉のカガリにも話したことはなかったのに。

「何で?という顔をしていますわね。人目で分かりましたわ。伊達に貴方を見ていませんもの。」

悲しそうな表情で微笑んでいる彼女。

そんな表情をさせているのは自分。

そんな表情をさせてしまったのは自分だから。

だから、悲しくなった。

「ごめん、ごめんね。ラクス」

謝ることしか出来ない自分。

彼女に答えてやれば彼女は喜んでくれるはずなのに、それでもフレイとのことを思うと

器用じゃない僕にはそんなことは出来ない。

「謝らないでくださいな。キラが悪いわけではありませんもの。」

――――――人は誰かを愛するとその方だけしか見えなくなりますものね。

寂しそうに、だけどどこか遠いところを見るかのようにみてから彼女は僕に微笑んだ。

いつものように、沢山の人々に笑っている『歌姫』として.....。













何で、彼女は僕のことを好きになったのだろう?

こんな醜い感情を持っている僕を。

そんな疑問にラクスは

『キラがキラだからですわ』

少し頬を染めながらいってくれた。

それに続いて僕も恥ずかしくなって頬を染めた。

『ありがとう』

せめて、お礼を言った。

こんな戦争をして血に染まっている僕に微笑んでくれる彼女に。

愛しいと、アスランとはまた違った大切な『好き』を教えてくれた彼女に。

お礼以外何が言えようか。

なぜ、こんなにも僕を見てくれている彼女よりもアスランを大切だと思うのだろう。

きっと、理屈では表せないくらい大切で愛しているんだ。













20040729