友達よりも何でも話せた、僕の親友。

とても、賢くて尊敬できて自慢の僕の親友だった彼。

そんな彼に、恋心を抱いたのは何時からだろう?











Cry for the moon

















「アスランとは最近どうなんだ?」

紅茶を一口飲んだあと静かにイザークは問う。

「別にどうも。」

その問いに興味がないかのようにキラは一言そういうだけ。

そして、イザークに続いて一口二口と紅茶を口にする。

キラの素っ気ない態度に腹を立てることもなく、口を開く。

「『別にどうも』でもないだろう、ここ数日会議が続いているから、会う時間もないだろう。」

「っ・・・・!!」

なら、なぜそう聞くのだ?とでも言いたそうな表情にイザークはクッと笑う。

「アスランとアスハが婚約した....まぁ、テレビなどでも言っているから知っているか。」

イザークは、瞳を揺らして俯いたキラに婚約したことは知っているのだと肯定した。

実際、テレビで知るよりも早くにキラは知っていた。

本人達が言いにきたのだから。

瞳を揺らして、どこか暗そうな表情のキラにイザークは小さく笑った。





これが、自分が執着していたパイロットには見えなかった。

初めて、元ストライクのパイロットだと紹介されたときは目を見張った。

こんな戦争には似つかわしくない表情で微笑んでいた彼。

仮にも、イザーク達がなかなか落とせなかったAAとストライク。

でも、その微笑みを出させていたのはアスランだったと後に気付いた。

仮にもこの前まで執着していたパイロットだとは思えない。

戦中の自分ならば「腰抜けが!!」の一言でも言わなければ気がすまないであろう。











「何か、言いたいことがあるのですか?」

そんな、小さな笑いが気にくわなかったのかキラはイザークの目を見て問う。

自分にとって嫌なことを率直に言ってくる彼。

イザークは、自分のほうを見たキラに満足したのか口を開く。

「アスランとアスハの婚約についてどう思っている?」

「っ!?」











何がいいたいのか?

何を言わせたいのか?

彼は自分の気持ちを知っているのか?













「祝福していますよ。親友と僕の姉が婚約してくれるんですから。」

その言葉を本当は2人に言わなければいけない言葉。

祝福しなければいけないこと。

だけど、『親友』と自分で言っていて悲しくなった。

所詮、僕はアスランにとったら『親友』の領域なのだから。





















「それは、本音か?」

静かにイザークは問う。

自分の考えが間違っていなければ

「お前は、奴が好きだろう?」

その言葉にキラは大きく目を見開く。

が、それも一瞬のこと。

「やっぱりイザークさんはイザークさんですね。」

自分の思っていることを率直に言える彼。

嫌なことを言われるけど、それでもその率直にいえる彼が羨ましいと何度思ったことか。

きっぱりと言えるその言葉。

その行動。

でも、

「違いますよ。僕はアスランが好きだけど、それは親友として。」

この2人には話せない。

いや、誰にも本当のことは話せない。

話す気もないのだから。























そんなキラの言葉にイザークは一つため息をつき席を立った。

「邪魔したな。行くぞ、ディアッカ。」

キラの答えに満足していないのか、どこか不満そうにキラの顔をみて、部屋を出ていった。

それに続いてディアッカも席を立ち、続くように部屋を出て行こうとする。

ドアの前で立ち止まり、キラのほうを振り返る。

「姫さんが、アスランのことをどう思っているのかは姫さんにしか分からないことだけど、

これでもイザークはキラのことを応援していることを忘れないでくれよ。もちろん、俺もだけどな。」

ディアッカはそれだけを言って部屋を出ていった。







残ったのは、静かな静寂と複雑そうな、歪んだ表情をしたキラだけ。