僕らの関係は

友達以上に親しくて、

恋人未満に、共にいられない。

『親友』という壁は曖昧なんだと思う。





Cry for the moon












ふと、目が覚めた。

近くに気配を感じて、億劫な目を長い時間をかけて開いた。







「アスラ...?」

「んっ、何だ?」

夢じゃないのかと思った。

だって、いるとは思わなかったから。

今日は、確か会議があるってディアッカから聞いていたけど。

「・・・・・・会議はいいの?」

「キラが倒れたって聞いたから。」

会議どころじゃなかったと苦笑した。

胸がトクンとはねたような気がした。













「もう少し寝ていたほうがいい。」

「んっ、」

だけど寝れるわけがない。

一度目覚めてしまってはなかなか寝付けない。

さらに、大好きなアスランが側にいると、ドキドキして寝れるわけがなかった。

ふとんを頭まで被りギュッと目を閉じる。

眠気なんかやっぱり一つもこない。









静かで時おり、アスランが読んでいるだろう本の捲る音が聞こえる。







「ねぇ、アスラン。」

沈黙が耐え切れなくて彼の名を呼んだ。

「どうした?」

本をパタンと閉じ、キラの側までやってきて座り込む。

ふとんから、もぞもぞと鼻の上まで覗かせてアスランを見た。

ただ、名前を呼んだだけだったから、

「何でもない、おやすみ。」

アスランに背を向けて目を瞑った。

アスランはそんなキラの様子に何も言わず、頭を一度軽く叩き髪を少し弄り撫で始めた。

それが、キラにはすごく安心できた。





「....懐かしいな。」

ふと、昔の自分達を思い出しアスランは目を細めた。

さらさらな栗色の髪はくせっ毛のある自分の髪とは違いさわり心地がいい。

昔は、風邪などを引いたキラの側にいたのは自分だった。

いつも、元気なキラが横になって苦しそうな表情をしている時に何も出来なくて、

せっせとキラの母と共に早く治るようにと看病していた。





「アスランの手、冷たいね。」

ある日、キラの頭に濡れたタオルを置くときに手が額へと掠めたのかタオルにではなく、

キラはアスランの手をとり額へとのせてそう呟いた。

「タオルより、アスランのほうがいいや。」

エヘヘと言った声は風邪特有の鼻声だった。

それでも、その表情はすごく嬉しそうだった。

その頃から、自分はキラを守らなければと思ったのだ。

キラには言ったことがないけれど(言ったとしても、『僕のほうが上〜!』と言われそうだったから)、

キラを守るのは自分の役目だと思った。

それは、今でも変わらない。









「忙しい時間は続くけど、出来るだけキラに会いに来るよ。」

眠っているだろうキラへと囁いた。

狸寝入りをしていたキラはアスランの言葉に一瞬驚いたが、

(ありがとう。)

心の中で目一杯にお礼をいった。

嬉しくて嬉しくて涙が出そうだった。







20050112