「ね、アスラン。ずっと一緒にいられるよね?」


「あぁ、オレとキラが一緒にいたいと望めば、いつでもいられるよ。」


それなら僕たちはいつまでもいられる。


僕は、君とずっといたいから。













<桜草>








「あっ「っ、なぜオレとキラが別れなければいけない!?」

キラが何かを言葉にする前にアスランはソファから腰をあげ勢いよくテーブルを叩いた。

2人でいられる。

2人が望めば一緒にいられるから。

そういったし、そう望んでいる。

一緒にいたくないなんて望んでいない。

キラが悲しそうに自分のほうを見上げているのが横目に見える。

「落ち着いてください。アスラン。」

静かにそういうラクスに腹がたつ。

「落ち着いていられるわけないじゃないですか!何ですか、急に来たと思ったら別れろだなんて。!!」

「アスっ、落ち着いて!!」

自分を落ち着かせようと服のすそをつかんだキラにも何故か腹がたった。

「お前はオレといたくないのか?」

「違うっ!!一緒にいたいからこそ理由を聞かなければいけないんだ。」

一生懸命に瞳で自分を見つめてくるキラにアスランは静かにソファに座りなおした。

「何で、アスランと別れなければいけないのか理由を聞かせてもらえるよね、ラクス?」

「えぇ、ですから私は貴方方の元へと来たのですから。でも、その前に1つ質問を。」

そういってアスランのほうへと体をずらした。

「キラが特殊なコーディネーターだとアスランは伝えられましたか?」

「えぇ、知っていますが....」

でも、そのことは誰にも話していないとキラから聞いた。

キラがアスランに伝えることができたのも戦争が終わりポツリポツリと少しずつ話してくれたのだ。

アスランはキラのほうを見るがキラは自分はしゃべってはいないと言う風に首を横にふる。

本人が知らないのに、なぜ彼女は知っているのか。

むしろ、知っているのはおかしい。

「先ほども申しましたがこの場所を知るときに失礼ですが貴方方の素性を見せていただきました。

アスランについては何も疑問には思いませんでした。キラに関して、おかしな点・不思議な点がいくつかあったのです。

クルーゼ隊長のディスクを以前に手に入れていたのですが、そちらのほうを見せていただいたら『キラ・ヤマト』と書かれていたのです。」

キラは、ギュッとアスランの手を握り締めた。











クルーゼの持っていたディスクには人類最高のコーディネーターについて全てといえるだろう内容が明かされていた。

人類最高のコーディネーターはクルーゼの言った通り、キラただ一人が成功作であった。キラ一人。

いや、人類最高を創るにあたってやはり失敗作ができるのは当たり前でだが失敗作といっても死んでいるわけでもなく生きている。

失敗作と研究所で罵られていたためか人間、ナチュラル・コーディネーター共にだ。

成功作にあり、失敗作にないものそれは、病。

「人類最高」とは、知識が豊富であり肉体的・精神的にも柔なことでは崩れない。

ナチュラルよりも強くコーディネーターよりも強いモノ。





「キラは、クルーゼ体長に『成功作』と言われたかもしれません。ですが―――。

キラのその症状は『失敗作』と罵られているソレと似ているのです。いえ、ソレと同じなんです。」

『失敗作』の病とは初めに軽い目眩や貧血などをおこす。

個人差はあるが、だいたい2ヶ月ほど。

2ヶ月たったある日急にそれはピタッと止まり、それから1ヶ月ほどたったころ急激に身体全体に痛みが走る。

ずっとではない。

何かを思ったり、感じたりするときにだけ。

何も思わず何も感じなければ痛みは走らない。

でも、それを人間がずっとできるわけがない。

「でも、僕は2ヶ月も目眩なんかしなかったよ。」

「貴方はメンデルにいた方たちが創られた紛れもない『成功作』です。でも...」

突然戦争の中に巻き込まれた。

親友いや、今現在恋人の彼と敵になった。

友を殺された。

沢山の人を殺した。

そして、

本当の真実をつきつけられた。









「キラ、休んでください。」

何も考えず

何も思わず

ただ、眠りについてほしい。

「眠りにつく?」

「えぇ、それが一番の得策なのです。」

いくら科学が進歩したからといって万全の対策をとれるわけがない。

だけど、今できることはキラが眠りにつくだけ。

「それだけでいいの?」

「それだけではありません。眠りにつき何ヶ月かもしくは、何年かその症状がなくなったと

判断するまで.....」

キラはただ俯いた。

意味を理解したから。

「誰とも会うことはできません。」

「そんなっ!!」

アスランは驚きを隠さずにラクスのほうを向いた。

キラがギュッと自分の手を握ってきた。

アスランの驚きを気にすることもなくラクスは表情をなくしアスランに言葉を発した。

「私は、キラと共に行きます。」

ですが、貴方はついてくるな。

目でそういってくるラクス。

「なぜっ!?」

オレが行く。

キラの側はオレだけだ。

そう言葉を発する前にラクスはまた言葉を続けた。

「貴方が今、消えたら困るからです。戦争の後片付けも残り少ないです。その後残った者たちに

必要なのは私の歌ではなくキラ(英雄)の声でもなく貴方(パトリックの息子)の言葉です。

彼らの支えは貴方です。」

それは、紛れもない事実。

戦争の火種を蒔いた父の後を継がねばならない。

戦争をするものとしてではなく戦争を終わらせるものとして。

「私たちは私たちのできることをやりました。私たちができることをやりました。

後は、貴方です。貴方の番なのです。」

これ以上は自分達に何もできない。

2年という長くも短い時間。

でも彼らの、共にいられなかった時間を埋め尽くすほど長くもない。

本当は、キラの病を知らなければあと少しだけ彼ら2人を見守っていられた。

だけど、今その時間がないのだ。

「っ.....。」

悔しいが自分には何もいえなかった。

「アスラン。」

キラは、小さく呟く。

「僕、ラクスと行くよ。」

アスランの瞳をじっと見て。









いつまた、会えるか分からない。






それでも、

「今度こそ側にいてくれるよね?」

「キラ....」

強いと思った。

それと共に自分が無力だと感じた。

「あぁ。」

何もいえない自分に腹がたった。

きっと、謝る言葉さえ彼は望んでいないだろうから。

自分を見ている瞳と共に向けられた笑顔。

それは、彼らが二人で共にいられた2年にも満たない短い時間の終わりを示していた。