平和だと感じるたびに不安がよぎるのは幸せになりきれていないからだろうか?












<オシロイ バナ>












シャワーを浴びて部屋に入ったらキラが空を見上げていた。

久しぶりに見る満月な空を。

ボーとしているキラを見て不思議に思った。

「どうしたんだ、キラ?」

たずねてみても反応は返してくれず、むしろ聞こえていないという感じがした。

今さっきまで、体をかさねていたから疲れてしまっているのかな?とも思ったが、明日はアスランに

とっての大事な面接があるため自分なりに明日のためにも控えていたつもりだった。

面接とは、何か職につこうと思っているから。

戦後、英雄と賞されているアスランとキラ。

その名のおかげかお金などももらったが、『復旧のためにそのお金はそちらに回してほしい。』

と、二人して願い出た。

それでも、暮らしのためにと少しだけいただいた。

のは、いいのだがそろそろお金が底をつきそうでキラと話し合った結果働くことにした。

幸いここは、地球。

キラの顔と名を地球にいるナチュラルもコーディネーターも知られている。 アスランの名も知られてはいるが、プラントに住んでいたためかあまり知られてはいなかった。 もちろん、ごく一部には知られているが....。

最初は、キラもアスランが働くならと自分もと名乗り出たがアスランはそれを拒否した。

キラはコーディネーターなのに地球軍に属していた。

それについては、アスランは何も言わない。 むしろ、だから戦争を終わらせられたのだから。 軍に属すためには訓練を受けなければならない。

それを受けていないのに、Gに乗ったのだ。

精神、肉体とともに大丈夫とキラは言ってるがそれでもアスランは心配だった。

そこまで、キラは強くは無い。

それは、彼には言わないが確かな確信であった。

それに英雄でもあるキラ。

そんな彼がバレたら今の静かな生活が崩れてしまう。

今ここにすんでいることは、皆に隠してある。




だが、ピンク色の髪をした歌姫なら。


いつも、そこまで考えたら最初に浮かぶのは彼女の後姿。


知っているかもしれない。


バレているかもしれない。


彼女なら簡単に自分たちの居場所を探すのにそんな苦労もせずにわかるだろう。


だけど、連絡のひとつも無い。


きっと自分たちに気遣っているのかもしれない。


目一杯の感謝と少しの罪悪感は心にあった。




「キラ?」

物思いにふけていたときに窓から風がひとつふき、キラのほうを振り向いた。

もう一度呼んでもキラは微動だにせず窓の外をみている。

かと、思ったが 「ねぇ、アスラン。」

ポツリと静かに呟く声にアスランは彼の顔をみる。

「このまま、ずっといられるといいね。」

そういってキラはアスランのほうを向く。

月明かりしかないのでよくは見えないがどこか悲しそうな表情をしているだろう彼。

「キラ・・・・・」

今にも消えてしまいそうな不安にアスランはキラのもとへといき隣へと座りギュッと抱きしめる。

背中を軽く叩いてやれば、肩を振るわせるキラがアスランの服をギュッと掴んだ

「不安なんだよ。幸せだと思うたびに不安になっていく。こわいんだ。」

今のこの時間が壊れそうで......。

「っ、大丈夫だよ。オレもキラも側にいたいと望めば一緒にいられるから。」

アスランは強く強くキラを抱きしめる。

その言葉は、自分自身にもどこか言い聞かせるように。





不安なのはどちらも同じ。


願うのはどちらも同じ。


そばにいたい。


ただ、それだけ。












『オシロイバナ』=臆病な愛

20040908