綺麗だと思った。








<ふうりん草>












「何を見ているんだ?」

後ろから聞こえた問いにキラは振り向いた。

「ん〜、何だと思う?」

逆に聞き返すキラにアスランは首を傾げキラの隣へと足を運ぶ。

先ほどキラが見ていたほうへと顔を見上げた。



あるのは、

「空?」

いつもと変わりのない空。

この季節には珍しい雲一つない空。

「うん、当たりっ」

キラは空を見上げているアスランの横顔に微笑みを向け空を見上げる。

「綺麗だなぁって思ったんだ。」

どこか懐かしいものでもあった、だけどそれが悲しいもののような声音でキラは言葉を続ける。

空を見上げているアスランのほうを向きながら.....。

「僕ね、アスランがプラントに行った後ずっと願っていたんだよ。」

その言葉にアスランはキラのほうへと顔を向けた。
















そう、願ったいた。


隣にいない『アスラン』の名を呼ぶよりも願うことのほうが多かったかもしれない。


だって、どんなに君の名を呼んだって、どんなに君の事を思ったって僕の隣にいるわけじゃないから。


僕の側にいないから。


知っていた。


分かっていたよ。


自分達が子供だって。


まだ、何もできない子供だって。


だからこそ願った。















願うことしかあの頃の僕にはできなかったから。
















「『アスランに会えますように』って、そう願っていたんだよ。」


子供だからって何も知らないわけじゃない。

ナチュラルとコーディネーターが仲が悪いことも。

外の世界ではナチュラルとコーディネーターが戦争をしていることも。

知っていたからこそ言えなかった。

自分は、第一世代のコーディネーターだから。

だから、プラントにはいけない。

あの別れのときには言えなかった言葉。

言えなかったじゃない言いたくなかったんだ。







「キラ・・・・。」






無知な自分。

無力な自分。

だからこそ、何もできず親のいいなりだった自分。











「あんな再会だったけれど、それでも出会えたことは嬉しいと思っているよ。」

敵同士だった。

友達を撃たれたり撃ったりした

それでも、今ここに側にいられる。

「どんな再会でも今またこうして君といられて、同じ空を見れることに感謝している。ありがとう。」

「キラ」

お礼を言わなければいけないのはこっちなのに。

キラの微笑みがとても綺麗で何もいえなかった。
















キラはそんなアスランの瞳を見てからまた、空を見上げた。

蒼い空を。

満面の笑みで。









『ありがとう』


心の中で空に感謝を述べた。










『ふうりん草』=感謝

20040903