『闇夜』
暗い闇。
何も見えず、何も聞こえず
ただ、何も見えない真っ暗な闇。
「なに、気配消しているのさ?」
ベッドの上で寝ころんでいたキラはドアの付近にいる彼へと声をかけた。
「別に消しているつもりはなかったんだけどな。」
「・・・・・・しらじらしい。」
どうせ、気配を消して襲うくせして。そう付け加えてベッドから見える窓から空を見上げた。
「今日は、月が見えないね。」
クスッ
「あぁ。」
アスランは、ドアの前から動かずにソッと笑った。
そんな彼に厭きれを感じながらも、何も言わずただため息をついた。
真っ暗で何も見えないが、きっと彼の手は血で汚れているはず。
彼の口は血に塗れているはず
「早く、シャワーでも浴びてきたら?」
「あぁ、そうするよ。お前も入るか?」
いつもとは少し違う。
自分の好きな彼とは違う雰因気。
「結構です。」
今の彼はいつもの彼とは違う。
「残念。」
言葉とは裏腹に笑いながらドアに手をかけ開ける。
廊下の灯りで真っ赤な血が手や口についている。
彼はフッとキラに微笑みかけるとパタンとドアをしめた。
「人の『クセ』を言う前に自分のをなおせっていうんだ。」
ポツリと1人きりの部屋でキラは呟いた。
闇夜:暗い闇。月の出ない夜。
20040613