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一人で家のベランダに出るのはここ最近の習慣としていた。

暗い闇の中に紛れるかのような錯覚に陥ることに安心する自分がいる。







       カチッ





部屋から持ってきたライターとタバコケースを片手に持ちケースから一本取りだしライターに火をつけて、口へと運ぶ。

そんな彼の何気ない仕草に見入ってしまった自分に苦笑しながらも彼の隣へと足を運んだ。

「何しているんだ?」

「別に....」

何も話したくないのか、それとも話すことが億劫なのか。

今の彼の表情を見たら後者にとれるだろう。



「星がね、綺麗なんだ。」

しばしの間の沈黙の後、キラは片手を延ばし真っ暗な空へと手をかざした。

「田舎だからか知らないけど、空気が綺麗だから星が沢山見える。自然ってやっぱりいいものだよね。」

人間の作り出した人工的なものよりも最初からあったそのままのモノは毎日毎日少しでも違う光景を見せてくれる。

「....そうだな」

濁った言葉を返され、不思議にキラは思ったが別段気にしたふうもなく、そのまま空を見上げている。







(本当は....)

薬の副作用のせいだろう。

見上げた夜空には、今にも雨が降りそうな勢いの空。

月は見えず、星なんてさらに見えない。

それを綺麗だと言える彼の言動に、まだ自分は彼を守ることができていないのだと言われているような気がした。

似合わないタバコをやめてほしい。

身体に響く薬はやめてほしい。

だけど、それを望むのは自分で、本人がそれを望んでいないなら。

自分はソレを止めることなんて出来ない。

それでも、自分の隣に当然のようにいてくれるキラに安堵している自分がいた。









自閉:心理的に自己の殻に閉じこもり,外界の現実に関心を示さないこと。
統合失調症の特徴的症状の一。
(精神分裂病:精神障害の一。病因は今なお不明。多くは青年期に発病し、感情の鈍麻・自閉症状・意志の減退・
奇妙な行動・幻覚・妄想などを示すが、症状の現れ方や経過は複雑で変化に富む。早発性痴呆。分裂病)

20050704