蝋燭をつけ、灯りを照らし沢山の亡くなったものへと辿りつけるように
ただ、願う。

安らかな眠りへとつけるように。




<精霊流し>





朝日も昇るか昇らないか、どこかで雀の囀りが聞こえる。




いつもは、昼まで眠っているのに、今日は特別な日だから早めに目覚めてしまった。
もしかしたら起きられないからと自覚し目覚ましをつけたはずなのに自然と目がさめてしまった。


何か悲しい夢でも見たせいか、起きたとき目元に少しの涙が流れていて、拭った後淋しさを感じた。

夢の内容なんて何一つ覚えていなかった。







浅瀬を前にして、持ってきた灯籠(とうろう)を両手で水の上に浮かばせた。


火を灯した灯籠を見つめ思い出そうと思う前にふっと出てくる過去の一瞬一瞬。


良い思い出なんてない。



自らの手で殺した同胞は何人と数えられるだけの人数ではなかった。

何十、何百、何千と。

あるいは、何万と。



知らなかった自分が悪かったのだ。
運命から逃げられるとも思っていなかった。





弱すぎた。



自分は沢山の人を傷つけたのだ。








アスランの戦友であるピアノが大好きだった彼。

志願して戦ってくれたトール。

名も知らない軍人や、民間人。









犠牲は犠牲を呼ぶのだ。








「早いな。」



思考を巡らせていると、背後から声が聞こえた。
振り返るとデザインは同じだが色の違う灯籠を片手に、軽々しそうに持っている同居人兼恋人。




灯籠を一緒に買いに行った記憶はない。

それなのに、同じデザインということは同じ店で偶然買ったのだろうか?

そんなどうでもいいことをキラは考えながら、アスランのほうを見た。


隣に腰掛け、ライターを手にし火をつける。



「祈りおわったのか?」

「うん。」

「・・・・そうか」


必要最低限を話すと言葉は途切れた。

話すことがないのではなく、話そうとは思えない。

今は隣にいる恋人のことよりも亡くなったものたちに自分達の思いを奉げたいのだ。

アスランも浅瀬に灯籠を置き、流れないようにと手で持ち黙祷(もくとう)した。








暫くの沈黙の後、目を開けた。













「送るか。」

「うん。」

二人同時に、灯籠から手を離すと静かに流れていく。

見えなくなるまで、その場から離れることはなくただ、流れていく灯篭を見送った。






「ありがとう。」

ただ、呟いた。

「さようなら。」

感謝の気持ちと別れの言葉を言い放ちキラは浅瀬に背を向け、歩き出した。







横目で去っていくキラを見た後、見えなくなった灯籠のほうへと視線を向け、

何も言わずにもときた道を引き返した。










+あとがき+

お盆には一日早いですが...upです。
アスキラの周りには、亡くなった方が沢山いますのでこういう時に少しでも
種キャラの彼らのことを思い出してくれると嬉しいのです。
運命では、そんな暇ないですけどね;;(苦笑)


☆追記☆
精霊(せいれい)とも呼べますが、これは精霊(しょうりょう)と言います。



20050814