戦場に散りゆく花が綺麗なのは、何も知らないまま逝けるからだろう。



<Memories>







涙なんてとうに消え去ったはずだと思っていた。

父と母と妹を亡くしたあのときに。





懸命に息をしているのに、命の灯火は既に消えていく手前。





「シン...」

“死”なんて知らないかのように、笑う彼女を見ているしか出来ない自分。

拳を握り締めて、だけどそれをステラに悟られないように。

「ステラ...」

名前を呼んだ。

反応を返してくれる彼女に安堵して。





「ステラ・・・・幸せ。・・・・ネオが・・・・・いて・・くれた」



思いを馳せるように言葉を紡ぐステラを前にして泣きたくはなかった。

この涙はステラにとって、意味のないものだから。



「スティングも・・・・・・・アウルも....一緒・・・・」

「うん、うん。」

相槌を打ちながらも握り締める手は離さない。

離せるものか。





「シンもね、いてくれた」

「...ステラ。」

「ありがとう...シン」

助けられなかったのに

お礼を言われる筋合いなんて一つもないのに。

自分という存在に感謝の気持ちを言われることはないのに。





「ステラ...シン、愛してる」

その言葉は、大好きなネオにも言ったことがない大切な言葉。


「ステラっステラ!!」



閉じていく瞳。

オレを映していたはずなのにそれは、閉じられていく。

永遠に開くことがない。



逝くな!

逝かないでくれ!





神なんて嫌しないのに願う先にいるのは神のみ。

望んだって

願ったっていないのに。

分かっているはずじゃないか。

それでも、

それでも....





「神様っ!」





呟く声はやはり届かないまま。

脳裏に焼きつく、ステラの笑みは既に“思い出”になっていく。







+あとがき+

軍に入ったからといって強くなったわけではない。
一度経験したからといって、今度は大丈夫なんて根拠はない。
悲しさは、いつだって知るもの。
アスカには、そういうところ“ステラ”に会って気付いて欲しかったです。 本編のアスカはどこまで戦争で気付いて分かっているのかいまいち分からないのです↓↓














20050801